ベトナムの司法システムの特徴
特徴1. 司法権の独立が無く、政治的影響を強く受ける
ベトナムの憲法において、国家の最高権力機関は国会とされており、行政機関、司法機関は国会の国会直属機関として位置づけられており、三権分立による権力相互間の抑制機能は働きません。
具体的には、人民主権であり、主権者である人民の代表機関である国会が最高の国家権力機関となるので、国家主席・政府・地方政権(人民評議機会及び人民委員会)・司法機関(裁判所及び検察院)は、国会に対して責任を負います。また、国家権力は統一されており、立法・行政(執行)・司法の権限は各国家機関に配分され、協同関係にあり権力分立関係にはありません。
このように、司法権の独立性がないため裁判所を含む司法は一党独裁の共産党の政治的影響を強く受けます。また、法令の解釈権は国会にあり裁判所にはありません。
国家権力は統一されており、立法権・法執行権及び司法権、それぞれの実現において各国家機関間で配分・協同・抑制される。ー憲法第2条
特徴2.未成熟で曖昧さが多く、法律に則った扱いを受けられないことも
法律の未整備や法令相互間の不整合がよくみられ、どちらに従えばよいのかわからないケースや、法令の文言それ自体が曖昧なケースも多く見られます。さらに、運用面においても、省庁ごと、地方ごと、担当者ごとに解釈が異なっていたり、新しい法令の内容が行政窓口に共有されておらず、法令に沿った取扱いを受けられないことも多いです。
曖昧で相互矛盾する法令の存在が、結果としてそれを解釈する権限を持つ公務員に大きな裁量を与えています。解釈が不安定となり、どれに従えば良いか分かないケースが多く、汚職・不正の原因になっています。
ベトナムの司法システムが抱える課題
ベトナムにおける「法令」の位置付け及び社会的役割は日本のそれとは大きく異なります。日本では実現可能性がない法律が制定されることはありませんが、ベトナムの場合は立法当局の担当者自身の認識が薄いため、実現不可能な規定が法令に盛り込まれたり,施行日が過ぎても必要な下位法令が間に合わないといった現象が生じます。
乱暴な言い方をすれば、法令は社会をあるべき姿に向けてリードするためツールに過ぎす、施行後直ちに遵守されねばならないような絶対的なものではないと言えます。多少の不遵守にも目をつぶることが許される程度に柔軟でさえあります。
この法制度の未整備・不透明な運用が、外国企業の投資環境上の大きなリスクとなっています。
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