レッドインボイス(公式領収書)の概要
ベトナムのビジネスにおいて、事業者は物品の販売またはサービスの提供時に公式領収書を発行する義務があります。この領収書は淡い赤色なので、現地では通称レッドインボイス(越名:Hóa đơn đỏ)と呼ばれています。
EU諸国や中国ではこの公式領収書の制度が導入されていますが、日本では未導入ですので、ベトナム進出の際に戸惑う日本人経営者はは多いです。
ポイント1. 「請求書と領収書の役割」
レッドインボイスは請求書と領収書の役割を果たしており、ベトナムでの法人税申告の際、 損金経理の証憑書類としてレッドインボイスが求めらます。 日本の場合、請求書や領収書などの取引を立証する証憑書類は存在するものの、消費税の申告は基本的に帳簿に基づき行われるのが一般的です。
ベトナムでは、このインボイス方式の場合は発行できる業者が限られており、付加価値税VAT (日本の消費税)に関しても明記しなければならないため、帳簿に基づいて申告が行われる場合と比べ、正確な徴税を行える利点があります。
ポイント2. 「発行・請求には納税コードが必要」
レッドインボイスの発行には支払側の税番号(MST・Mã Số Thuế)が必要になります。つまり、ベトナム国内法人が設立されていない限り、レッドインボイスは発行出来ません。請求する相手側も同じくベトナムの税番号を取得している法人であることが前提です。
ポイント3. 「必須記載事項」
- 発行者の税務コード、正式会社名、住所
- 購入者の税務コード 正式会社名、住所
- 商品名またはサービスの内容
- 単価
- 個数
- 合計金額
- VAT率
- VAT額
- VATを含んだ合計額
- 日付
- 発行者及び署名、捺印
- インボイス番号
- 印刷会社で印刷した場合は、印刷会社名とその税務コード
ポイント4. 「細かい規定有り」
レッドインボイスは公式領収書であり、支出費用を損金として計上するため、また付加価値税(VAT)の還付が発生する際にも必要な証憑書類となるため細かい規定が定められています。 具体的には、レッドインボイスは全てベトナム語で記載する必要があり、会社名や住所等の必要情報が完全一致している必要があるなど。
もし、一字でも誤りがあれば証憑書類とは認められず、法人税法上や損金算入ができません。 また、レッドインボイスに記載されている付加価値税の額が、誤って通常の税率より高い金額で記載 されていたとしても、通常税率分しか控除できないため、レッドインボイスを受け取った際に厳重に確認しましょう。
ポイント5. 「VATレッドインボイスと販売レッドインボイスの2種類」
VATレッドインボイスと販売レッドインボイスの2種類があります。まず、VATレッドインボイスは税率及び税額を記載する区分があり、控除法によるVAT計算をする企業が使用する、ごく一般的なものです。
一方、販売レッドインボイスは税率及び税額を記載する区分がなく、直接法によるVAT計算をする企業が使用します。販売レッドインボイスには税額の記載がないため、当該販売レッドインボイスを入手した企業には、控除できる仕入れVAT税額がありません。
ポイント6. 「発行形式は電子版と印刷版の2種類」
2018年末まで自社発行インボイスは使用可能でしたが、2019年から電子インボイスへの切り替えとなりました。
- 注文印刷インボイス(Ordered Invoice)
- 電子インボイス(Electronic Invoice)
ポイント7. 「VATは原則10%」
100,000VND (500円)を超える取引には原則VATが発生し、その比率は基本的に10%です。レッドインボイスを発行する場合、例えば1Milli VND(5,000円)の支払いを請求する場合、10%のVATを加えた 合計1.1Milli VNDとして発行します。
レッドインボイスを発行する(注文印刷型)
- 直轄税務局が許可した印刷業者の中から適切な印刷業者を選択する
- 自社のロゴの色やフォント、全体の色及び数量等を決定する。
- 投資証明書のコピーやロゴのデータ等を準備し印刷業者とミーティングを行う。
- 上述の 1.から 3.の手順後、印刷業者が契約書を作成する。
- 印刷業者から送付された契約書を確認の上、契約を結締後、通常は印刷料の 50%を前払い。
- 印刷業者が仮印刷したインボイスを確認する。修正が必要な場合は、仮印刷したインボイス に直接書き込み、署名と社印の押印の後に印刷業者に提出する。
- 最終確認後、本印刷が行われる。この際、希望した数量とは別に 2セットのサンプルインボ イスが納品される。
- サンプルインボイス発行届に署名と社印を押印し、10日間以内に税務局へ提出する。 なお、インボイスを発行する予定がある場合は、5 日前までに税務局に提出する必要がある。
- 不正利用防止のため印刷業者にインボイスの金型の破棄を依頼する。